Salam(こんにちは)、DEKAEです。
もうきっかけも忘れてしまいましたが、10年以上ずっと行ってみたいと思っていた場所がありました。
それが、中央アジアの独裁国家トルクメニスタンにある「地獄の門」。
訪れるには色々とハードルがあり、なかなか決断できていなかったのですが…
2025年5月、ついにこの目で見ることが叶いました。
※以下、すべて2025年5月現在の情報。
地獄の門 Darvaza Gas Crater
概要
「地獄の門」というのは通称で、その正体はカラクム砂漠の真ん中にある巨大なガスクレーター。
1971年のソ連による掘削調査のさなか崩落し、地下の洞窟から天然ガスが噴き出してしまいました。
近隣に有毒ガスの被害が及ばないよう、火をつけて燃え尽きるのを待つことにしたものの、50年を超えてなお燃え続けています。
ここ数年は消える消える詐欺が続いていましたが…(そろそろガスが枯渇するとか、新しい大統領が本気で消しにかかっているとか)
貴重な資源である天然ガスゆえ、別ルートからの採取計画が進んでいるようです。
というわけで、「行くなら2025年が最後のチャンス」説がまことしやかに囁かれている中での訪問となりました。
ただし、いかんせん情報統制の厳しい独裁国家のお話。実際のことは誰にも分かりません。
ベストシーズン
砂漠地帯ということで、夏は厳しい暑さ・冬は厳しい寒さにさらされます。
私はゴールデンウィークを利用して行ったため5月上旬でしたが、このあたりがベストシーズンといって良さそうでした。
日中は日差しが強いものの、夜になってもさほど冷え込む感じではありませんでした。
半袖Tシャツと羽織程度でちょうど良かったです。
ツアー会社
トルクメニスタンは自由旅行を許可していないため、ガイドの同伴が必須。旅行会社を通じて手配することになります。
インターネットも規制が厳しいのかと思っていたらそんなことはなく、どの旅行会社からも比較的すぐに返事がきました。
最終的に、あらかじめ日付と価格が決まったAdvantourのパックツアーに参加することに。
他社で完全オーダーメイドの個人ツアーの見積をとってみたりしましたが、やはりお値段はとんでもないことになります…
日付を提示して「この中で混ざれるグループツアーが催行される日はありますか?」と聞いてみるのも一つの手かと。
私が訪れた2025年5月は、4日間のトランジットビザを活用する裏ルートが生きていなかったようです…とはいえ、明らかに一人で行動しているバックパッカーもいたので何らかの方法はあるのかも?
集合・出発
国境へ
今回のツアーはウズベキスタンの古都ヒバ出発のもの。イチャン・カラ(城壁)の西口が集合場所でした。
看板を持っている人がいるわけでもなく、このバスかしら…というものに近寄ってみたらそうだった、という緩い感じです(笑)
ここから1時間ほどかけて、ウズベキスタン側の国境に向かいます。
さらに1.5kmの距離を移動し(徒歩または1USDのバス)トルクメニスタン側の国境へ。
トルクメニスタン入国にはビザが必要です。しかし、いざ入管でビザの申請をすると「ガイドがいないとダメだ」と追い返された一行。
途方に暮れていると、国境の向こうから我々のガイドさんが現れました。
彼の指示に従ってなんちゃってPCR検査を受け、ビザの取得・料金の支払を行います。
このあたりの一連の流れがもうひっちゃかめっちゃかで、トルクメニスタン人も旅行者も疲労顔(笑)
入管で何が起こっているかはガイドさんにも分からないといった調子で、さっそく独裁国家の洗礼を受けます。
昼食
朝8時にヒヴァを出発したのに、トルクメニスタンに入れたのは11時過ぎ。
まずは外国人旅行者の入店が許可されていると思しきレストラン(笑)で昼食をとります。
ドグラマという郷土料理。焼いたパンくずと玉ねぎと羊肉、羊だしのスープが提供されました。
当初つけ麺のように具材をひたしながら食べていましたが、ガイドさんが丸ごとスープに放り込むのを見てなるほど、と(笑)
隣の方が頼んでいたハンバーガー。爆笑のビジュアル
ここでガイドさんが両替してくれます。1USDが15マナトでした(闇レート)。
ドグラマは30マナトいかないぐらいだった気が…。2USDくらいなので、観光客向けとしても破格のお値段ですね。
車窓風景
国境を越えてからはトヨタの4WDに分乗し、砂漠地帯へと向かいます。トルクメニスタンで日本車はメジャーではないようでしたが…
道中、問題をかかえて停車しているクルマをかなりの頻度で見かけました。
そう考えると、トヨタのクルマってやっぱり過酷な環境下でも壊れないのかもしれません。
道なき道をゆく
一部舗装されている(?)箇所もありますが、基本的にデコボコ道かオフロード。相当の揺れを覚悟する必要があります。
また、窓を閉めていても砂埃を感じるため、アレルギー体質の方はマスク着用を激しく推奨いたします。
休憩ポイント
途中、地元の商店で運転手さんたちの休憩タイムです。
この間はツアー客も買い物が許されるほか、5マナトでイスラム式トイレを利用可能。
行きも帰りも外国人旅行者がみんなここに立ち寄っていたので、これまた許可された場所なのでしょう。
トルクメニスタン製のジュースを買ってみた。5マナトとかだったかな…
お土産に買ったトルクメニスタン製のチョコウエハース。1個2.5マナトなので、10個買っても25マナト。安すぎぃ
商店の次のトイレ休憩は起伏のある砂漠地帯でした。その辺の山に隠れてしてくださいね、ということ(いわゆる青空トイレ)です。
地獄の門
ガスクレーター
午後7時ごろ、ガスの採取が行われていることを思わせる重機がいくつも見え始めたところで車は進路を変えました。
いくつもの山を越えた先に、唐突にガスクレーターが現れます。
ついにここまで来てしまったか…
4時間の悪路を越え、ツアー参加者たちの表情には高揚よりも穏やかな達成感が浮かんでいます(笑)
明るい時間帯にはあまり迫力が感じられないのは想定済み。それでも、炎の轟音と吹きすさぶ熱風にはすさまじいものがありました。
まずはサンセットをひとしきり堪能。夕食後には気が済むまで眺め続けられます。
う~ん キャンプファイヤーみたい←
タブレット端末で撮影した写真ではどうにもリアリティが伝わりません。実際には、夕方に見たときと恐ろしさが段違いでした。
炎そのものの迫力はもちろん、足元が真っ暗だと遠近感や方向感覚も狂うんですね。
自分がクレーターに沿って歩んでいるのか、その深淵に向かっているのかも分からない。
燃えさかる炎に手招きされ、吸い込まれそうな感覚すらありました(柵は立っていますが、あってないようなものです)。
離れると「地獄の門」と呼ばれる所以がよく分かります。
肉眼で見るとクレーター上空にも光が放射状に伸びており、本当に異世界への入口かのよう。
空までうっすら赤みがかった色に染まります。
優雅にお茶している人たち。強烈な熱風がたびたび吹き付けるし、何よりガス臭い中よくやるなぁと…
崖に腰掛けている人もおり、見ているだけで冷や汗タラ〜でした。落ちたら戻ってこられんよ?
当分はこのように賑わっていますが、深夜にもう一度来てみると誰もおらず、しばし一人の時間を過ごせました。
ここは本来、決して観光気分で遊びにくるようなところではないのですが――
それでも長い時間とそれなりのお金(約500USD)をかけて来て良かったなと、しみじみと感慨に耽りました。
夕飯
夕飯にはトルクメニスタン料理が提供されますが、これが豪華なのです!
温かいスープに始まり、プロフやその場で焼いたシャシリクまで…。ここまでのハードな道中を思うとまるで桃源郷です。
特にプロフは日本のピラフにも近い味わいで、中央アジアの油ギットリプロフに辟易する旅人の舌と胃を癒してくれました。
ふあっふあの毛並みで大切にされていそうなネコ
砂漠地帯にはサソリやヘビが出るということで、それらを退けるための(?)ネコやハリネズミがあたりをうろうろしています。
キャンプサイトの入口はラクダとロバが見張っていました(?)。
怯えていたヘビやサソリには出会いませんでしたが、大量のフンコロガシがいたよorz
ワンちゃんもいるという情報でしたが会えず。ただ、夜すごい吠えていたのでどこかにつながれていたものと思われます(笑)
キャンプサイト
地獄の門付近にはユルタ(遊牧民の家屋)が並ぶ村ができあがっていて驚きます。
ここはトルクメニスタンの旅行会社OWADANが作り上げたもの。この政府公認ではない(?)観光地にもかなり注力しているようで…
夕食後には、日本語が話せるOWADAN社スタッフによるトルクメニスタンの魅力プレゼンがありました。
その後、なんとOWADAN社のシャッチョさんまで出てきて直々にご挨拶。
なんでも日本にはたびたび来ていて、大好きな国の人が自分の国を訪ねてくれることが本当にうれしいとのことでした。
本社は首都アシガバッドにあるので、4〜5時間かけてここまで来たんですねぇ。まさか日本人の集団がいるときは毎度来るのかな…?
おトイレも文明社会のトイレ。紙はもちろん緊急時の水タンク、ハンドソープまであります。トルクメニスタンの砂漠にいることを忘れる
皆さん当然ユルタ泊の中、私は一人部屋オプションです♪
貸し切りユルタは高すぎたのでケチってテント泊…。このテント、わざわざスタッフさんが設営・片付けしてくれるらしく本当にすみません
中で普通に座ることもできないくらい小さなテントですが、寝るだけなら充分快適。窓から満点の星が見えますしね。
2日目
朝食
朝は充実のアメリカンブレックファストが供されました!卵料理なんて目の前で作ってくれるビュッフェスタイルです。
続・トルクメニスタンの砂漠とは思えない
感動の出会い
帰路は疲れ果てて基本爆睡だったんですが(ドライバーさん本当にありがとう)、いくつかうれしい出会いがありました。
野生のラクダの親子!可愛い。
実はこの前にも一度ラクダの親子に遭遇したのですが、ガイドさんが気を引こうとしたら急ぎ足で逃げてしまい(笑)ここで名誉挽回でした。
さらに、おびただしい数の羊の群れが見えてきたと思ったら――それらを束ねるのは、遊牧民の親子三代でした。
「Salam.」とご挨拶すると、微笑みながら「Salam.」と返してくれて。
これほど住む場所や生き方が違っても通じ合えるのかと、この出会いにも心が震えました。
クニャ・ウルゲンチ
1泊2日ツアーだと、たいてい2日目は世界遺産のクニャ・ウルゲンチに立ち寄ることになります。
チケット代はツアー代金に含まれていましたが、写真を撮る場合は別途50マナト。急に高いね⁉笑
詳細は割愛しますが…現地のトルクメン人たちがツアー客と一緒に写真を撮りたがり、わちゃわちゃしたのが印象的です。
この後レストランに立ち寄って昼食をとり、国境へ戻りました。
レストランでガイドさんとドライバーさんへのチップ回収袋が回ってきます。希望者のみということでしたが、あらかじめ準備しておくといいでしょう。
私の担当ドライバーさんはすごく気遣いの人で、本当にお世話になりました…
参考:ビザ
ツアーに申し込むと招聘状が発行されますが、ビザ取得にはこの招聘状が必須です。
これを持って入国管理に出向くことでアライバルビザを取得できますが、東京都内の在日トルクメニスタン大使館でも取得可能。
日本で取っていったらアライバルビザより安かったので、関東にお越しの方は事前取得もご検討ください。
大使館の公式サイトの情報が誤りだらけだったんですが(笑)今回、初めての入国で4日間の観光ビザ取得費用が25USD。
なんと即日発給で、USDの現金を持っていなかったので慌てて用立てに行きました…。
(入国にかかる費用はいずれもUSD建てです)
事前にメールでアポイントをとる手間が少々面倒ですが、記載内容の不備で追い返されることもなくわりと親切。
「お金持ってないんですけど」と言っても「ビザ発給しとくんで両替行ってきていいっすよ」みたいな緩い対応で、つくづく日本人であることはありがたいですね…
ちなみに、招聘状の発行元はOWADAN社になっていました。
おわりに
長年夢みた「地獄の門」。動画や画像では散々見てきたとはいえ、五感で体験するとまったくの別物でした。
明日にはその炎が消えるのか、我々の死後まで燃え続けるのか――それは誰にも分かりません。
行きたい場所には行けるときに行こう、と改めて感じた2日間でした。
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おしまい