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N響×パーヴォ・ヤルヴィ×メシアン『トゥランガリラ交響曲』

こんにちは、DEKAEです。あの衝撃作の生演奏をついに聴けました!

オリヴィエ・メシアン作曲、現代音楽の金字塔ともいうべき『トゥランガリラ交響曲』(1946~1948)です。

トゥランガリラ交響曲 Turangalîla-symphonie

出会い

もともとこの曲の存在は知っていたのです。

しかしメシアンという名前でまずちょっと敬遠(救世主みたい=重い曲ばっか作ってそうという謎の先入観)。

しかもトゥランガリラですよ、トゥランガリラ。これは完全にこじらせていると思って聴かず嫌いでした。

それが、2018年3月4日放送の『クラシック音楽館』(東京都交響楽団、同年1月18日録)で聴いてしまい もう一気に虜。

この曲、アメリカのボストン響からの委嘱で書かれたそうですね。

時の音楽監督クーセヴィツキーは「あなたの使いたい楽器を全て使って、好きな長さで書いていいよ」と伝えたと言われています。

そうしたら、フルサイズのオケ・2台の鍵盤楽器・ピアノ独奏・オンド・マルトノ独奏という総勢100名を超える大編成で、80分にも及ぶとんでもない曲ができちゃった。

「トゥランガリラ」とは、サンスクリット語でリズムを意味する「トゥランガ」と愛を意味する「リラ」を組み合わせて「愛の歌」と解釈されているようです。

間違いなくこじれているのですが(←)これが私のツボに見事にハマりました。

20世紀中ごろの楽曲で現代音楽の括りですが、極端な無調性ではなく純粋に音楽として美しい。

そして打楽器の大活躍。打楽器奏者だけで10人必要なんだそうです。かつて吹奏楽部でパーカッションをやっていた者としては非常に楽しい。

ちなみに15種類ほどの打楽器が出てくるのに、ティンパニーが無いという不思議な編成。メシアンあるあるらしい。

そして極めつけは謎の電子楽器オンド・マルトノ

オンド・マルトノ Ondes Martenot

オンド・マルトノはマルトノさんというフランス人が考案した電子楽器で、テルミンを発展させたもの。「オンド」は波の意味。

テルミンってご覧になったことありますか?箱からアンテナのようなものが伸びていて、その付近で手を動かすとフイーンフイーンと音程が変わる妙な楽器です←

これを鍵盤楽器のような形にして、より幅広い音程や音色を自由に表現することを可能にしたそう。

鍵盤を押して単音を出せるほか、右手に指輪のようなものを引っかけて左右にスライドすることでフイーン音を出すことができます。

スピーカーを通して音声を出すものの演奏方法はきわめてアナログ。

シンセサイザーはこれに着想を得て作られたのではと推測…

音色のイメージは電話機のボタン操作音とか、信号で使われているヒヨコの鳴き声のような感じかな。

見た目は…勝手に貼って良さそうな写真が見当たらないので、よろしければこちらの日経電子版をご覧ください。

style.nikkei.com

しかし これを思いついた人も凄ければ、クラシック音楽で使ってみようという発想も凄い。

さらに今でも奏者がいることが驚きですね…絶滅危惧楽器などと揶揄されていたりもするようですけれど…

最近ではオペラ『皆殺しの天使』(トーマス・アデス:2016)で登場したようです。

これ、密室殺人を描いた同名映画のオペラ化なのです。METライブビューイングでやっていて気になってたんですよね~。

ということで、いまだオンド・マルトノを用いた新曲まで登場している模様。絶滅する隙もありゃしませんね。

N響 オーチャード定期 第104回

概要

さて、そんなトゥランガリラ交響曲をご贔屓のNHK交響楽団がやるというではありませんか!しかも指揮は我らがパーヴォ・ヤルヴィ

というわけで6月のオーチャード定期に行ってまいりました。

オーチャードの音響が個人的にちょっとアレなので本当は定期演奏会Bプロ(サントリーホール)に行きたかったのですが、Bプロのチケットは定期会員じゃないとほぼ入手不可ですね…

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ピアノ独奏はロジェ・ラムロ。メシアンの弟子でもあった人で、作曲家本人を知るメシアン弾きとして引っ張りだこのようです。

第一印象は「デカっ!」。その分 腕も長い。でもこの曲のピアノ弾くにはこれぐらいリーチがないとしんどいかも…と見ていて思いました。

オンド・マルトノはシンシア・ミラー。これまでにトゥランガリラは約200回演奏、先述の『皆殺しの天使』の初演でもソリストを務めたそうです。

キラキラの黒いセットアップに黒縁眼鏡でヘンテコリンな楽器を操るシンシアさんは、なんか魔法学校の教師のようでした。

という盤石な体制で臨む本公演です。

感想 -トゥランガリラは宇宙なのか-

感想というか誠に私的で勝手な印象のメモ書きです。

第一楽章「導入部」

始まった途端に音と情報の洪水に飲み込まれる!

オンド・マルトノが「ワレワレハ ウチュウジン デアル」って言ってるようにしか聞こえない。

チャイニーズシンバルがジャン、ジャン、ジャン!とやって、大太鼓の一発で締める終わり方がカッチョイイ~

第二楽章「愛の歌Ⅰ」

速いテンポとゆったりした音楽が交互に現れます。オンド・マルトノのグリッサンドをここぞとばかりに堪能。

第三楽章「トゥランガリラⅠ」

バリ島の朝もやの中 遠くに鳴り響くガムランを聴きながら瞑想している。突然 宇宙人からのメッセージを受信。

第四楽章「愛の歌Ⅱ」

深海の底、沈んだまま何年も眠っていた宇宙船のコックピットに突然光が灯る。何かを受信しているが、聞き取れる言葉ではない。

宇宙と深海は私の中で何となく共通しているのです。この楽章ではピアノのパルス音から宇宙船の印象を受けました。

第五楽章「星たちの血の喜び」

『N響アワー』でも使われていた最も有名な部分です。

副題は言い得て妙。星たちが煌めく宇宙、そしてただの喜びではなく血湧き肉躍るような喜び。

あまり時間がないけどトゥランガリラを聴いてみたい方には、とりあえずこの楽章を試してみることをお勧めします。一度聴いたら頭から離れません。

第六楽章「愛の眠りの園」

第五楽章で「ブラボー!」となってしまってもおかしくないところ、クライマックスに向けて一旦心を落ち着けるための楽章って感じかな。笑

重要な「愛の主題」がここで登場。

第七楽章「トゥランガリラⅡ」

この楽章が一番捉えどころがなく、現代音楽って感じがします。

しかしパーヴォさんの指揮で聴くとよく整理されているというか、「う~ん訳分からん」という感じにならないのが不思議です。

第八楽章「愛の展開」

オンド・マルトノフィーチャー。トリルなどの技法が出てきます。

ラストは銅鑼がドゥワ~ン!と。その余波の地鳴りのごとく大太鼓のトレモロが遠ざかって終わります。

第九楽章「トゥランガリラⅢ」

これの見どころは弦楽アンサンブルでしょうか。弦楽器は13名だけと指定されているようで、独特の緊張感があります。

第十楽章「終曲」

オーケストラとオンド・マルトノが「愛の主題」を歌い上げます。ドビュッシーの『牧神~』的なフワっとした旋律ですが、これが愛と言われると納得してしまう不思議な力がありますね。

ここまでやってきて一体どう収拾をつけるんじゃという感じですが。

最強音で鳴らした後にスービト・ピアノ(ただちに弱く)し、そこから一気にクレッシェンド。

オケがめいっぱいの音量になったところでパーヴォさんが打楽器を煽る煽る!

銅鑼とチャイニーズシンバル、大太鼓が全てを飲み込んで終わります。

もうこれが格好良すぎて、死んだ。本当に目の前がくらくらしました…

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全体的にパーヴォさんらしく もっさりしすぎないテンポで進んでいったように思います。

そして私とにかく打楽器鳴らしときゃいいみたいな現代音楽が苦手なのですが、この曲に関しては非常に効果的で素晴らしかった…。

西洋音楽的な管弦に対して、ガムランや生物の音のような打楽器の使い方はかなり東洋趣味、というか仏教っぽい。

オンド・マルトノは「昔の映画の宇宙の音」って感じなんですが、仏教にも壮大な宇宙観があり、何なら仏の教え=宇宙の真理そのものと言えなくもないわけですよね。

その真理こそが愛なのだとすると…救世主っぽい名前のメシアン、実はかなり深く仏教を理解していた人なのかも…と得意の妄想が捗る捗る。

おわりに

今回張り切って前方席を取ってしまい、鍵盤楽器と指揮者しか見えないという状態での鑑賞となりましたが(笑)まぁこの曲に関してはそれも面白かったです。

オンド・マルトノは近くで見ても意味不明でしたけど…

いずれにせよ80分もあったのに「えっもう終わり!?」と思ってしまったほどで、大満足で帰路についたことは言うまでもありません。

強いていうなら拍手はもう少しだけ待ってほしかったかな…orz

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マエストロ、今回も素晴らしい音世界への冒険をありがとうございました。

 

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おしまい