仕事の打ち合わせで、あるいはサボり場として、はたまたデートの舞台にも――
昭和の日本を彩ったのが純喫茶ではないでしょうか。
「レトロさがエモい」として若者の間でリバイバルを巻き起こしているものの、2021年には全国で100軒あまりの喫茶店が廃業したそうです(過去最多)。
東京も都心部では姿を消しつつある純喫茶ですが、下町エリアには昔ながらのお店がまだまだ健在。
今回は、その中でも「奥浅草」にスポットを当ててみたいと思います。
奥浅草(観音裏)とは
こんにちは、DEKAEです。
日本を代表する観光地、浅草。ちょっと一休み…と思っても、観光エリアのお店でなかなか落ち着けないという難点があります。
そんな浅草ですが、意外な穴場になっているのが浅草寺から言問通りを渡ったあたり。
浅草寺の観音様の向こう側ということで「観音裏」あるいは「奥浅草」なんて呼ばれているエリアです。
界隈には知る人ぞ知るグルメの名店のほか、昭和レトロを感じる純喫茶が集まっています。
というわけで、実は純喫茶めぐりにもおあつらえ向きなのですよ。
もちろんお茶するだけで構わないのですが、軽食もおいしいのが純喫茶の魅力。今回は食事メニューを中心にご紹介しています。
1. デンキヤホール
最初にご紹介するのは、千束通り商店街にあるデンキヤホール。1905年創業、正真正銘の老舗喫茶です。
外装・内装はリニューアルしているようですが、現代的なカフェからはおよそかけ離れた趣。
元祖オムマキ、そして開店当時から変わらぬ「ゆであずき」がイチオシです。
まずはお昼時に伺い、オムマキを頂いてみました。
オムマキ(700円)。焼きそばを薄〜く焼いた玉子の皮で包んであります。
焼きそばにケチャップって禁断の組み合わせでは!
そば麺が特徴的で、一般的なものとは異なる平たいタイプ。パッタイ(タイの焼きそば)に近い感じです。
個人的に、普通の焼きそばよりこういう形状の麺のファンなのでラッキーでした。
そしてたっぷりのキャベツが一緒に炒められています。これによってかなり甘みが加わるため、焼きそば自体の味は優しめ。
物足りない人が多いのか、やたらバラエティ豊かな味変グッズが同時に置かれました。
ソースは分かりますが、唐辛子がなぜか4種類もあります。見ると、それぞれ長野・東京・京都のものみたい。
私のイチオシは祇園原了郭さんの「黒七味」でした〜。山椒の風味が強く、一気に味の印象が変わります。
こうなると、もはやオムライス的な見た目からはかけ離れたモノですが…いろいろと自分好みの味付けを模索できるのもまた愉しいですね。
醤油派の方はお店の人に相談してくださいw
お供にはクリームソーダ(650円)。
本棚には漫画や雑誌がずらりと並んでおり、この日はナポリタン食べ歩き本を拝借してゆっくり過ごしました。
お次はゆであずき(550円)です。
厳選された小豆の素朴な味わいを活かしたホットドリンクで、明治~大正期から愛されてきた究極の甘味。
「熱いですよ」と供されましたがすこぶる熱かったです。なんかこういうのいいですよね、冷めるまで長居する言い訳ができる気がして。
ところで、オムマキのときとはテーブルの様子が異なることにお気づきでしょうか。
なんとこちら、すっごい昭和を感じるゲーム卓なのです。
中身はずいぶんなモノでした。故障中でプレイできないのが残念です(白目)
押し心地の良いボタン達。座り心地は…笑
デンキヤホール → 食べログ
営業時間は9:00~21:00。食事類は11:30からの提供です。平日限定でランチにはコーヒーまたは紅茶が付きますよ。
ただし、食事の提供には概して時間がかかるため時間に余裕をもってお越しください。
昼過ぎると食事メニューは品切れになっていることもありますが、オムマキはけっこう余裕がある様子。
水曜定休ですが、祝日の場合は翌平日が休みです。
※全席喫煙可です。
2. 喫茶ジョイ Coffee Lounge Joy
デンキヤホールより浅草寄りの通りをひょいと右に曲がると現れるのが、喫茶ジョイです。
かなり年季が入っており、正直店の前まで行かないと営業しているのかも定かではない感じ…
しかし、中に入ると意外な大箱で驚き。背の高い植物があることで余計にリラックスムードが漂います。
現代の東京でこの規模の喫茶店はなかなか見つからないのではないでしょうか…かつて店内に電話ボックスがあった名残まで見られます。
またもや座りづらいゲーム卓をチョイスしてしまう私。
ランチタイムに伺うと、いくつかランチメニューがありました。その中からナポリタンのセット(900円)をお願いします。
このナポリタン、具材がマッシュルームと海老っ!ハイカラじゃありませんか!?
たまに残念なナポリタンにあたると突き刺すような酸味を感じることがありますが、そんなものとは無縁なマイルド風味。
かつ、トマトが入ることでふくよかなコクが生まれています。
えっすごい好みなんですが!玉子スープまで美味しいし。
さらに、セットドリンクにメロンソーダが選べるのです。コーヒーまたは紅茶しか選べないお店が多い中、これは妙なお得感がw
会計時には次回使えるランチお値引き券ももらえました。近所なら通いたひ
他にも魅力的な食事メニューがたくさん。11時以降はいつでも注文可能ですよ〜
喫茶ジョイ → 食べログ
営業時間は、メニュー記載の案内によると9:00〜20:00(土・祝は18時まで)。日曜定休です。
ただし表の看板には8:00〜21:00と書いてあり、どちらが正解かは謎…
オープンから11:20までモーニング、11:20〜14:00までランチあります。
※タバコは店内の喫煙ブースかお店の外で。
3. しゃん
千束通り商店街をさらに北上すると現れるのがこちら。昭和50年創業の自家焙煎のお店、しゃんです。
パッと見普通の喫茶店のようでありながら、実はかなりの個性派ですよ。
立派なイスが並ぶ店内。コーヒードリッパーが並び、一杯ずつハンドトリップしている様子を眺められます。
背中で語る系のマスター、ハンチングと白髭が渋い!
絶対に試しておきたいのが、オリジナルスタイルの冷たいカフェラッテ(500円)です。なんてったってバリューコスパ。
エスプレッソが入ったグラスに、マダムがたっぷりミルクを注いでくれます。上品だけれどキビキビ働くマダム、高いところから注ぐ仕草が板についている…
「まずは2〜3cm飲んでください」と言われた通りにすると…泡立ったミルクにふんわり甘みが!
思わず「あ、美味し」とか間抜けなことをつぶやいてしまいました。
空いたスペースにさらにミルクを注いでもらいます。
最初はミルクとコーヒーの比率が7:3くらいなんですが、だんだんエスプレッソと溶け合ってちょうどいい甘さのカフェラテに仕上がります。
うぅむ、こんなカフェラテは飲んだことがない…。
もひとつお願いしておいたコーヒー・プリン(500円)です。
かためのプリンはエスプレッソがきいてしっかりほろ苦。アイスクリームと合わせていただくと絶品です。
ちょっとレベル高すぎ!ご近所さんたちの客足が途切れないのも納得ですが、これならもっと遠方から通う人が多くてもおかしくないですよ…
初めてでも明るいマダムが優しく接客してくださるし、コーヒーならびにコーヒー文化を愛するすべての人に訪れて頂きたい名店です。
しゃん → 食べログ
営業時間の目安は8:00~17:00。ただし、日によっては14時ぐらいに閉めてしまうこともあるよう。
定休日は毎週水曜日ですが、臨時休業があるようなのでご注意ください。
8:00〜10:00の間モーニングサービスあり。サンドイッチがなんと100円から頼めます(別途ドリンクオーダー要)。のりトースト(250円)が美味しそうすぎる…
※禁煙です。
4. ロッジ赤石
奥浅草の喫茶店でもっとも有名な場所といえば、間違いなくロッジ赤石でしょう。
1973年創業、24時間営業で花街の人々やタクシードライバーに重宝された昭和の生き証人です。
安定のゲーム卓に着座。ここまで来るともはや習性の域
スナック感もあるカウンター。
シャンデリアかと思いきや、凝った装飾の電球でした。
やっぱり頼んでしまうクリームソーダ(650円)。
ナポリタンスパゲッティ(800円)。玉ねぎ・ピーマン・薄切りベーコンという、非常にオーセンティックなナポリタンです。
純喫茶といえばナポリタンでしょ〜と言いたくなるのですが…こちらは敢えてナポリタンを注文する必要もないくらい、食事メニューが豊富なんです。
ハンバーグ&海老フライという王道の洋食メニューに始まり、うどんや丼ものなど何でもござれ。
東京ではあまり見かけない焼きうどんもあるし、冬場には鍋焼きうどんなんてものにも強く惹かれる…
なんというか、喫茶店というより幹線道路沿いにあるレストハウスってな趣です。タクシー運転手たちの憩いの場だったのも納得。
お酒も出すので「純喫茶」の定義からは外れてしまいますけどね。
ロッジ赤石 → 食べログ
もともと朝5時まで営業していたのですが、コ○ナ以降は9:00~24:00に短縮されています。なお23時以降は深夜料金が加算される模様。
定休日は月曜(平日・祝日問わず)です。
※禁煙です。
5. カフェ・エル CAFE ELLE
静かにショパンが流れ、壁に絵画が並べられた店内。演出されたレトロではなく、かつてあちこちにあった町の喫茶店そのままの姿です。
住宅にまぎれてポツンと現れるため、お客さんも地元民が中心。
訪れた日は、カウンター席には常連さん・テーブル席には近所のマダム連がいらっしゃいました。
マダムたちが食事しながら「おいしい、おいしい!」と喜びの声を上げるものですから、否が応にも期待が高まります。
ランチで食事を頼むと、優しいコンソメスープとサラダが出てきます。
メニューには「サラダ」ではなく「生野菜」と書かれているのがまた何とも…
ハンバーグ(ランチセット850円)。
基本に忠実といいますか、これぞハンバーグと言いたくなる安心感のある味です。
箸でスッと切れる柔らかさ。玉ねぎの甘みも、ご店主夫婦のお人柄を表すような優しさです。
食後には紅茶を。
食べ終わるタイミングを見計らって、茶葉から丁寧に淹れてくれました。カットレモンも古き良き喫茶感で素敵である…
カフェ・エル → 食べログ
営業時間は8:00~18:00、日曜定休。
8:30〜13:00までモーニングセット、11:30〜14:00までランチセットあります。
※タバコ情報不明…
おわりに
慌ただしい参道付近とは打って変わって、のんびり長居できる懐の深さがあるのが奥浅草の純喫茶です。
1杯のコーヒーでゆったりと時間を過ごす贅沢な場所が減るのはなんとも寂しいとはいえ、時代の流れには逆らえないのも事実。
だからこそ、気になるお店は後悔する前に訪れておきたいものですね。
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おしまい