ニッチでごめんね

A pulp information about lesser-known world

刺青ラテアート!?新竹のカフェで台湾原住民の伝統を学ぶ【台湾・新竹】

IT企業が集積し「台湾のシリコンバレー」とも呼ばれる新竹市は、近年若者が増えつつある注目の都市です。

そういった都市では必然的に面白い出来事が発生するもの。今回は、台湾原住民の伝統的な刺青文化の再評価を目指すカフェにスポットライトを当ててみましょう。

台湾原住民の刺青文化(トライバルタトゥー)

台湾「原住民」の存在

你好(リーホウ)、DEKAEです。

2019年末に台湾一周の旅(環島)を企てるにあたり、改めて台湾について調べ始めました。

そうして気付いたのが、台湾は「多民族国家」であるということ。

九州ほどの大きさの島国ながら、様々なバックグラウンドを持つ人々が存在し、あるいは今でも生活していることを知りました。

彼らは台湾語で「原住民」と呼ばれ、16の部族が原住民に認定されています。

現在は中国大陸系の漢民族が大半を占める台湾。「純粋な」原住民は減り、現代社会で伝統的な生活様式はほとんど残っていません。

一方で、原住民の血を引く自らのルーツに誇りをもち、そういった伝統を絶やすまいとしている人々もいます。

日本統治時代の刺青廃止

さて、そんな原住民文化の中でも興味深いのが刺青文化。

いくつかある台湾原住民の部族では、所属を示す刺青(トライバルタトゥー)を入れることが一般的でした。

とりわけ有名なのがタイヤル族。台湾北部から中部にかけて住む民族で、顔を横切るような刺青が衝撃的です。

しかし、この刺青は日本統治時代に禁止されました。時期を同じくして、琉球女性が伝統的に手に施してきた「ハジチ」という刺青も禁止されています。

以降、こういった伝統的な刺青を施す人が絶えてしまいました。そして2019年、刺青を顔に施した最後のタイヤル族女性が死去したとの報が。

顔に入れ墨施した最後のタイヤル族女性が死去/台湾 | 社会 | 中央社フォーカス台湾

台湾のトライバルタトゥーアーティスト

そんなこんなを調べているうちに知ったのが、Cudjuy Patjidresというタトゥーアーティストの存在でした。

台湾 トライバルタトゥーの歴史【Tribal Tattoo APOCARIPT】

彼のルーツはパイワン族という原住民。パイワン族も顔に大きな刺青を施す民族で、Cudjuyさんの顔もインパクト大!

台東の出身らしいですが、現在は新竹市を活動拠点としているようです。

トライバルタトゥーから着想を得たデザインを得意とし、時に「ハンドタップ」と呼ばれる伝統的な技法も使って墨を入れます。

そんな彼のInstagram(@cudjuy_tattoo)を見るうち、彼が監修に協力しているカフェが新竹にあることを発見。

そこではなんと、台湾原住民のトライバルタトゥーを模したラテアートが人気だというではありませんか!

水鹿咖啡館 Formosan Sambar Café

アクセス

ここからやっと本題です(笑)

環島の経由地として、もともと立ち寄る予定だった新竹駅。その付近にお目当てのカフェがあることを知って狂喜乱舞です。

駅から歩くことおよそ10分、「水鹿珈琲館 Formosan Sambar Café」に到着しました!

代官山とかにありそうな、洒落た佇まいです。

しかしここ、思ったよりもひっそりとした路地裏でした。ラブホかしらというようなホテルもあって若干歩きづらい雰囲気…

中に入ると、早速木工細工によるオブジェやテーブルたちが迎えてくれます。かたやカウンター席ではMacをいじっている人もおり、今時のカフェですな。

刺青ラテアート

席に案内され、メニューを渡されました。

が、全て繁體字で全く分からなかったため、お店のインスタ(@formosansambarcafe)を見せて「こういう感じのラテください」と注文。笑

Wi-Fiがさくっとつながるお店ってありがたい…

対応してくれた店員さんが、台湾には珍しいマウジー系のギャル(笑)でちょっとキンチョー。

しかし、英語で「そのラテはこちらですね」とメニューを指してくれました。

恐らく「圖騰拿鐵咖啡(Totem Coffee Latte)」というものだったと思います(70$)。

こちらは単なるお洒落カフェなだけでなく、コーヒーそのものにもこだわっているようです。

メニューにも、様々な産地のドリップコーヒーがラインナップされていました。

待つこと数分、私の頼んだカフェラテの到着です。

おおっ可愛い!!

ギャル店員さんが、これが台湾原住民のタトゥーの紋様であることを説明してくれました。

「実はトライバルタトゥーに興味があって、このお店を知ったんです」と言うと少々驚かれましたが(笑)さらに詳細な説明が。

やはりラテアートのデザインはCudjuyさんが考案したもので、台湾原住民のいくつかの民族の刺青を採用している、とのこと。

私のラテは「○○族の男性が身に着ける紋様」と言われましたが、肝心の○○族が何か分からないっていう←

雰囲気など

「原住民の伝統工芸品も飾っているので、よかったら見てみてください。今流れている音楽も原住民の民族音楽なんです」

なるほど、ずいぶん個性的なBGMが流れているなと思ったら(笑)

決して大きくはない店内に所狭しと工芸品が並べられ、独特の温かい空気が流れています。

販売しているものも多数。女性用のアクセサリーが充実してました。

営業時間

水鹿咖啡館は原則、日曜が定休日。

営業時間は平日が9時から18時まで、土曜日が10時から18時までと早めの閉店なのでご注意ください。

トーストなどのモーニングメニュー、デザート類もあります。

今回注文しなかったけれど気になるのが、タトゥー柄のクッキー!ラテアートと同様、刺青の模様がつけられたクッキーが並んでいるのが非常にユニークです。

台湾原住民の今

トライバルタトゥーのリバイバル

ここからは余談です。

環島中に高雄にも滞在し、高雄市立図書館に立ち寄りました。

そうしたら何と、高雄市立美術館で開催中の「刺青展」の告知がでかでかと出ているではありませんか!運命的なタイミングです。

で、美術館にもトコトコと出かけてみました。

この企画展はフランスの美術館との共催。

世界のタトゥー文化に焦点をあてたもので、台湾原住民のタトゥーに関する情報はごく僅かだったのですが←

世界各地(特に東南アジアや小さな島国)でトライバルタトゥーの価値が見直されている、という事象を念頭に構成されていたように思います。

和彫りに関する資料も充実していたほか、ロシアの犯罪者に施されるタトゥーがけっこう印象的で…。また研究対象が増えちゃう

出口にはインスタレーション形式のアンケートがあり、「あなたはタトゥーをしていますか」「タトゥーについてどう考えますか」などと問われていました。

まぁ日本でも議論になっている点ですが、台湾においても賛否両論みたいです。

実は2019年の10月から11月にかけて、沖縄県立博物館・美術館にてドンピシャの企画展をやっていたようなんですね。

okimu.jp

これにもCudjuyさんが一枚噛んでいた模様。

原住民テレビ

台湾のホテルでテレビの番組表を眺めていたら、驚くことに「原住民チャンネル」というものがあるんですねぇ。

民族衣装を着たキャスターが、台湾語ではない言語でニュースを読んでいます。

下部にはその言語の読み方が。台湾原住民の言語の多くは文字をもたないため、無理やりローマ字表記されています。

台湾語の字幕もちゃんとありますね。

このチャンネル、原住民だけでなく漢民族向けと思われる番組もやってました。

たとえば、あるニュースに対して「原住民としてどう考えるか」的な街頭インタビュー、はたまた「原住民が住むところ」の観光情報などなど。

おわりに

これまで台湾が多民族国家というイメージを持っていなかったため、新鮮な学びでした。

台湾人の多くは日本統治時代を悪く思っていない、という話も聞きますが…それによって失われてしまった伝統があることも事実。

もっとも、トライバルタトゥーの消失は時代の流れかもしれませんが…

リバイバルの動きがある今、このような伝統に再度注目してみることも、多様性社会を生きるうえでのヒントになるかもしれません。

まずは居心地の良いカフェで、気軽にタトゥー文化に触れてみてはいかがでしょうか。

関連記事

www.niche-dekae.com

 

おしまい