こんにちは、DEKAEです。
日本の世界遺産のひとつ石見銀山。
私はもともと鉱山跡など労働の痕跡が残る遺跡が好きなんですが、石見銀山については「がっかりスポット」的な口コミが多いことが気になっていました。
ところが!実際に訪れてみると、日本史・世界史・郷土史、そして流行りのSDGsまで絡む大変興味深い地だったのです!
そのことに気付けたのも、現地の有志によって運営される「ワンコインガイド」に参加したからこそ。
というわけで、岩見銀山を訪れるなら絶対に見逃せないガイドツアーについて触れながら、実際に見学した様子をご紹介します。
石見銀山
概要
石見銀山は島根県大田市にある日本最大の銀山です。
その歴史は古く、もっとも栄えたのは戦国時代から江戸時代の前期にかけて。
江戸時代中盤以降は銅も産出するなどして長きにわたって操業を続けましたが、1923年(大正12)に閉山します。
しかし、これが2007年に至ってユネスコの世界文化遺産に認定。「石見銀山遺跡とその文化的景観」として登録されました。
それには大きく3つの理由があるとされています。
①鉱山の最盛期は大航海時代で、銀の算出により世界経済に多大な影響を与えた
②坑道や関連施設の保存状態がよい
③当時の街並みが今でも残り、また今でも人が住んでいる
特に②と③に関しては、持続可能な鉱山運営がなされていたこと、地域住民が閉山後も資産として大切に守り続けたことが高く評価されているそうです。
石見銀山ガイドの会
そんな石見銀山ですが、先述の通り「がっかりスポット」的な風説もちらほら…。
アクセスの不便さもあり、私もここまで行くにはなかなか腰が重かったのです。
そんな折、世界一周から戻って日本一周をしていた友人がいるのですが、彼女から突然「石見銀山がめちゃくちゃ良かった!」と連絡がきたのです。
ま、私が鉱山とか好きなことを知っての連絡だったのですが(笑)ぜひ行ってみてほしいと書かれていました。
そして、その際には必ず「ガイドツアー」に参加するように、と。
調べてみると、石見銀山には「石見銀山ガイドの会」というボランティア組織があることが分かりました。
こちらは2000年に発足して以降、居住区域である大森地域や銀山の坑道を案内する有志の活動。
メインは「ワンコインガイド」と呼ばれる500円で回れるもので、一日に数回出発しています。
繁忙期の休日などは定員いっぱいになることも多いらしく電話予約しておいたほうが無難です。
今回は直接「ガイドの会」の事務所に赴き、その場で参加することができました。
事務所の場所はこちら。
多くの方が「世界遺産センター」からバスで大森地区に移動することになると思いますが、「大森バス停」の近くです。
ワンコインガイド
出発
さて、ガイドのおじさんに連れられて早速出発。
道中地域の皆さんに挨拶をしたり、目につく史跡について解説してもらったりしながら、のんびりと歩いていきます。
登山道にはたくさんの種類の植物や鳥が生息しており、各方面のウォッチャーたちも訪れるようです。
こちらは梅の木。坑夫たちの間では梅の身をつぶした水でマスクを洗うと鉱毒防止になると信じられていたとか…?
それでも、坑夫で30歳を超えると長寿のお祝いをしたそうです。
ガイドさんのお話を通じて、当時の人たちの習俗や生活の実態についても知ることができます。
楓の木もたくさん。秋には鮮やかな表情を見せてくれそうです。
こちらは毛利家が祀られている神社です。
福岡で絶大な権勢を誇った毛利氏、尼子氏を退けて石見銀山を手に入れます。
時にフランシスコ・ザビエルが山口県を訪れたのは、布教云々より有力者である毛利氏と交易の話をしに来たのでは…という説もあるそう。
私長州の生まれのもので、このあたりの話は大変興味深く聞かせてもらいました。
さらにこの時代、中国(清)では貨幣制度が銀本位制に移行。身近なところにも銀の大量消費地が現れました。
日本史と世界史はかくして交わるのですね…学生時代の自分に教えてあげたいorz
天井画が美しいことで知られるお寺。空海上人が祀られる真言宗のお寺です。
あっガイドのおじちゃん写っちゃった
苔むす石垣と階段が情緒的ですね~!でも一人だったらちょっと上がる勇気なかったかも…
普通に見ていてもなかなか気付けなかったと思われる天井画。ガイドさんがいてくれて本当に良かったです。
そうこうしているうちに、実際に採掘作業が行われていたエリアに到着しました。
見えるところ・見えないところにおびただしい数の入口があります。
どうやら役所によって採掘エリアは細かく決められていて、それだけの数の入口や坑道ができていったようです。
この福神山間歩というのは特殊な坑道らしく、斜めに下りながら川の下を通り、川の向こう側の山の出口に繋がっているらしい。
説明を聞いたけどよく理解できませんでした←
説明書きの下に描かれているのは、掘るのに使われた道具の図。
当時は重機とかないので、すべて手作業ですからねぇ…気が遠くなりそうな話です。
それで年間約38トンの銀を算出していたとのこと。
現代の感覚でいいくとずいぶん少ないような気がしますが、当時の世界の総産出量が年間600トン。
世界にその名が知られるには十分なシェアだったのです。
この辺まで来ると坑道の風が吹いてきてかなり涼しいです。
それに伴い、夏場は虫がマジでヤバいので要注意。蚊だけでも何十匹と群がってきたので、虫よけグッズがあったほうが安全かもしれません。
その他にもよく分からない虫たちが大量に突っ込んできます←
龍源寺間歩
さて、このツアーのハイライトである龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)の入口に到着。
ガイド料とは別に入場料(大人1名410円)がかかります。電車マネー使えます。
このときはWAON割引とかいう謎のキャンペーンがありましたが、いつもやっているのかは謎。
この辺りに来るとヘビノネゴザというシダ類があちこちで見られます。なぜここで急に登場したかというと…
実はこの植物、重金属を好んで蓄えることで知られています。つまり、この植物を目印に鉱脈を探していたと考えられるわけですね。
このことからカナクサとも呼ばれています。
それでは、いざ中に入ってみましょう。
坑道内は年間通して14℃程度だったかな?夏は涼しく冬は暖かく感じる温度です。
極端に頭上が低い場所等もないので、無理なく歩けます。
坑道の写真は基本真っ暗なのであまりお見せしてもしょうがないのですけど…
このように、鉱脈があった場所を照らしながら解説していただけます。
観光で歩けるのは坑道全体の4分の1程度。150メートルほどなので内部の見学は一瞬で終了ですが、出口付近には非常に興味深い展示がありました。
出口に向かうトンネルにこのような絵画が並んでいるんです。
当時、お役人に仕事内容を説明するために記録されていたようですが、これが後世の研究にも大いに役立っています。
この絵は採掘作業の様子。今でこそ坑道が出来上がってますが、掘り始めはほとんど身体も動かせない状態でひたすら手を動かしていたと思われます…
特徴的な前半分だけの下駄。足場を上り下りするのに、この形が最も安定していたんだそう。
そして、左の絵では灯りを持った人が描かれています。この灯りは、サザエの殻にえごま油を入れたもの!
安価なのと、虫食いの被害が少なかったためにえごま油が採用されたのだとか。当時は菜種油のほうが高級品だったそうです。
こちらも重要な資料。
重たい銀を、川の流水を使って運び出す仕組みも考えられていました。
このような設備に使われるのは間伐材であり、周辺の森林管理が適切になされていたことがうかがえます。
また採掘が終了した場所には植樹を行うことで山の再生も考慮されており、17世紀ごろから持続可能性を念頭に置いた鉱山開発がなされていたことが分かりました。
坑道の奥に進めば空気が薄くなるため、常に外気を取り入れるテクノロジーも開発されていました。
給金は代官所にて日払い。当時は日本各地から流れ者がやって来て急激な人口増があったと考えられるので、合理的なシステムです。
鉱毒などに配慮し、一日あたりの労働時間も決められていました。
江戸時代には15歳未満を働かせない決まりとか、子ども手当とかあったそうですから…現代に通ずる仕組みがほぼ出来上がってるんですよね。
こんな風に記録がとられているってすごくない!?←
北斎漫画テイストなのがまた愛おしい…
坑道を出たところでガイドは終了なんですが、帰り道もご一緒して頂き、行きに通らなかった道のポイントも解説してくださいました。
修繕中だった鉱山の神様です。
リアルパワースポット。しかしもはや登る元気は残されていない←
しかし本当にこの鉱山を取り巻く歴史、お役所による運営、当時の人々の暮らしぶり、そんなことがイメージできる120分でした。
友人がワンコインツアーへの参加を強く勧めてきた理由が改めて分かりました。
注意
ガイドツアー参加にあたり、すべて徒歩移動となるので注意が必要です。
大森地区から龍源寺間歩の入口までは歩くと45分ほどかかり、緩やかな山道が続きます。
レンタサイクルやシャトルカートもありますが、それらの利用を考えている方は個人で見学しましょう(帰りのカートは利用可能ですが)。
また私が見学した日、坑道内は前日までの雨の影響で絶えず水滴が落ちてきていました。
水が服につくとこんなことになってしまうので、濃い色の服のときは気を付けて!
やはりミネラル豊富なんでしょうねぇ…ま、洗えばきれいに取れます。
その他
石見の世界遺産エリアで特徴的な自動販売機。
景観に配慮して木枠で覆われています。これは自治体主導ではなく、町民の発案で始まったそうです。
そういった町民の姿勢も、世界遺産認定にあたり重要なポイントになったとのこと。
余談ですが、石見の町を覆う赤っぽい瓦は日本三大瓦のひとつと言われる「石州瓦」です。
釉薬に含まれる銀が、焼成時に反応して赤っぽくなるのが特徴だそうですよ。
石見銀山のお土産と言えばげたのはです。たたくと下駄で歩く音がすることからこの名がついたそうな…
すっごい素朴な味。硬めのタマゴボーロってな感じでしょうか。
1枚あたり40kcalもないので安心です(?)
おわりに
銀山周辺は自由に散策できますし、龍源寺間歩もガイドなしで入場可能です。
しかし歴史に興味がある方や、戦国時代~江戸時代の労働者の実態について興味がある方は、断然ツアーへの参加がおすすめ!
なぜこの地が世界遺産に認定されたのか、深く理解できること間違いなしです。
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おしまい