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6年に一度の奇祭!蓋井島・山ノ神神事に行ってみたけれど【山口県下関市】

こんにちは、DEKAEです。

2018年11月の3連休、実家のある下関市に帰省していました。

目的は山陰の離島 蓋井島(ふたおいじま)で執り行われる『山ノ神神事』を見学すること。

実はこの神事、全国的にもとても珍しいものなのです。

蓋井島の『山ノ神神事』

概要

何が珍しいのかというと、6年に一度、辰年と戌年にのみ行われる神事であるという点。

規模こそ全く違えど、長野県の御柱祭などと同じ『式年祭』です。

この蓋井島で200年を超えて実施されているとのことですが、その謂れはよく分かっていません。

ただ、日本古来の神事の形を残すものとして民俗学上 重要視されているようで、国指定の重要無形文化財になっています。

蓋井島には『山ノ神』を祀る四つの森が存在し、それぞれの森に人工的に作られた『山』は『一の山』『二の山』『三の山』『四の山』と呼ばれます。

この森は普段は神聖不可侵の場所で、神事のときだけ立ち入ることが許されます。

島にはそれぞれの山に仕える『当元』と呼ばれる家があり、代々神事を取り仕切ってきました。

また島内の37世帯(平成30年4月1日現在)全てがいずれかの『山』に属し、神事の際にはそれぞれの当元を中心に『山ノ神』に奉仕するわけです。

現在 神事は辰年と戌年の11月、勤労感謝の日を含む三連休で開催されています。

一日目は『山』から各当元の家に神を迎える『神迎え』。

二日目に神に饗する『まかない』と『山』に送り出す際の飾りである『ツクリモノ』を準備します。島を挙げての準備作業であり、実際には神事の一年以上前から作業を開始しているとか。

クライマックスは三日目の午前中の『大祭』。そして『神送り』をもって神事は終了します。

ただこの神事、恐らく下関市民でも知っている人は多くはないのではないでしょうか。

私の両親も知りませんでしたし、事前に下関市役所の観光課に開催日を照会したときですら「蓋井島のシンジ…ですか?」と聞き返されたほど。笑

かく言う私自身も、大学の民俗学の授業で初めてこの存在を知ったのです。

一時は中止の検討も

そんな『山ノ神神事』、蓋井島の人口減少と高齢化により、2018年度については一度中止も検討されたとか。

しかし古くから続く伝統を絶やすわけにはいかないとして、一部の儀式を簡略化して開催にいたったとのことです。

新聞記事によると、『ツクリモノ』と『まかない』を簡素化。そして従来『大祭』で実施していた餅まきを取りやめるとのことでした。

さてさて、6年に一度しかお目にかかれない貴重な神事。その二日目、『ツクリモノ』の準備作業をこの目で見るチャンスに恵まれました。

が、想像していたものとは少々違いまして…

早速見てみましょう。

一の山

▲歓迎されております。

『一の山』は到着時点で『ツクリモノ』作業は終わっていました。

黄色い置物(?)の左側にあるのが、新聞記事で「大作」と紹介されていた竹で作ったローラーコースター。小さい子は大喜びですね。

▲このように手作りのお土産コーナーもあります。

▲(恐らく)地元出身のホラー漫画家・関よしみ先生の作品。扉を開けると…

▲びっくり!

この他、色々な長さの竹筒を並べて、順にたたいていくと『ふるさと』の旋律が流れるように調律(?)されたものもあり、大作揃いといった感じでした。

二の山

続いては『二の山』。

この足場は完成なのか…?

▲こちらは絶賛作業中。テーマは宇宙のようです。

▲このR2-D2、頭部がチカチカ点滅してました。

そして『二の山』にはお土産品がいっぱい!!

三の山

『二の山』と畑を隔てて『三の山』。

▲温かいメッセージとともに迎えられます。

▲大勢で作業中。

▲このように『二の山』と『三の山』はこの日まだまだUNDER CONSTRUCTIONといった感じで、作業風景を見学することができました。

人が通るたびに「あっすみません…」と邪魔になっていた感は否めませんでしたが。

近くに転がっていたこの羽も飾り付けられるのでしょうか…

『一の山』『二の山』『三の山』へと通じる森の入り口は良い感じです。

四の山

お次は少し離れた別の森にある『四の山』へ。

個人的には最もパンチきいてたのが『四の山』かな。テーマは竹取物語だったみたい。

▲プーさんって月から来たんでしたっけ…?

▲竹を切ったら小判がザックザク…って別の話と混ざってない?

これが『四の山』。木で人工的に『山』が設えられ、中に壺が埋まっています。

今さらですがご神体を撮ってよかったのでしょうか…。送り迎えの際にはこの『山』にしめ縄をかけて儀式を行うようです。

神迎え・大祭・神送り

それにしても『ツクリモノ』の趣旨は神様を盛大に送り出すというところにあったと思うのですが…いつ頃からこのような方向性になったのでしょう…

名誉のために申し上げておくと、決して観光客にこの『ツクリモノ』を披露することが神事というわけではありませんw

『神迎え』では神官が『山』から神様を迎えて当元の家までお連れし(『神送り』はその逆ですね)、その後を島民がついて歩く様は一種の行進のようです。

一連の儀式の模様は後日、新聞各紙に写真が掲載されていて確認できました。恐らく一日目と三日目に行けばこの様子も見られたんですけどね…トホホ

まぁメインは当元の家での宴で島民が神様をもてなすことなので、なかなか本質的な部分が観光客の目に触れることは少ないのでしょう。

そういう意味では、現代にあってツーリズムに染まることなく粛々と執り行われる神事 という点で極めて興味深いです。

しかも当元を中心とした民間(「家」)が主体になっているという。

(この「家」というモノも研究し始めるとキリがないんですよねぇ…)

ついでにいうと、神事の期間だけとはいえ そんな神聖な森に余所者を普通に入れてしまうというのも、なかなか懐の深い神様だなぁと。

そう考えると一見シュールな『ツクリモノ』も、老若男女が共にわいわいと作業したり、見て楽しんだりすることにこそ意義があるのかも。

そんな様子を神様が喜んでくださるのかもしれません。

――完全に勝手な妄想を繰り広げてますが、この神様にすごい親近感が湧いてきました…

まかないの謎

帰りの船に、運動会に持っていくような風呂敷に包まれた平たい容器を持っているご一行がいらっしゃいました。

あれはもしや『まかない』…?だとしたら一体どこで得たのか…気になる…

などと悶々としておりましたら、同じ疑問を持った別の乗客の方が「それ『まかない』ですか」と尋ねていました!

やっぱりそうだったのですが、どういう経緯で持って帰るに至ったのかまで聞きとることができず、若干のモヤモヤを残したまま帰路につきました。

おわりに

「蓋井島」の名の由来も『ツクリモノ』で知ることができました。朝鮮半島に近い位置にあり、それによる歴史的背景も絡んでいるようです。

重要無形文化財でありながら、島の高齢化・人手不足により存続が危ぶまれるというジレンマを抱えるこの神事。

おそらく次回以降も島民の皆さんは決断に迫られるのでしょう。

私のような外野がとやかく言うことはできないのですが…どうかこの看板に書かれた通り、再訪のチャンスがあることを願います。

 

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おしまい