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先帝祭は800年を超えて続く年中行事【山口県下関市】

こんにちは、DEKAEです。

私の故郷 下関市で特に重要とされる行事、先帝祭。

その謂れや毎年5月の連休中に開催される祭りの模様を、写真を交えながらご紹介します。

先帝祭とは

壇ノ浦の合戦と平家の悲劇

下関市は日本の歴史が三度、劇的に変わった場所です。

壇ノ浦の合戦、奇兵隊の結成、日清講和条約の締結。先帝祭はこのうち、壇ノ浦の合戦に深く関わる年中行事です。

源氏と平氏の争いがここ下関の壇ノ浦で決着したこと、時の安徳天皇が幼くして関門海峡に入水されたことは、多くの方がご存じのところでしょう。

安徳天皇の遺骸が漁師の網にかかり、阿弥陀寺(現在の赤間神宮)に安置されたとされます。

合戦の翌年より、安徳天皇の命日にこの赤間神宮にて弔いの儀式が執り行われました。

これが「先帝祭」として今にいたるまで続いているわけです。

漁師となって落ち延びた平家の生き残りが参拝したのがはじめと言われており、現在もその漁師(=平家)の末裔といわれる方々による参拝の儀式があります。

これを書きながらふと、なぜ阿弥陀寺なのに神宮?と思って調べてみたら、廃仏毀釈で神社になったんですって。日本史の授業で習ったー。

なお赤間神宮は怪談『耳なし芳一』の舞台でもあり、平家一門の墓の横に芳一さんの像もあります。

先帝祭のクライマックス・上臈道中

平家滅亡の折、遊女に身を落として下関の地で生き延びた平家の女官たちも、安徳天皇の命日には威儀を正して赤間神宮に出向きました。

この参拝も連綿と続き、時は江戸時代。心ある遊郭の主人がこの伝統を後世に伝えようと、遊女たちに立派な花魁の姿で参拝をさせます。

それが上臈道中(じょうろうどうちゅう)のはじまり。

最大の見せ場は花魁の衣装と高下駄で披露する「外八文字」。足を大きく外に流しながら前へ運ぶ歩き方です。

現在は、五人の太夫さんが手押し車で市内を回りながら、数か所のポイントでこれを披露します。

そしてそのゴール地点となるのが赤間神宮。

この日の赤間神宮には「天橋」を呼ばれる真っ赤な橋がかけられ、ここを通って一行は本殿へ。「上臈参拝」です。

これが本当にきれい。下関市民ですが初めて見たときは感動してしまいました。

この橋は神官、太夫一行しか踏むことしかできません。

太夫さんたちもここでは高下駄を脱いて素足に。片手を前に突き出すような独特な動きで一歩ずつ進みます。

ここで先帝祭の上臈道中はクライマックス。

ちなみにこの花魁の格好というのがえらく重いらしい。総重量20~30kgになるとも聞いたことがあります。

また何重にも重ね着をするため、その日は一日中お手洗いに行けないとか…

上臈道中が行われるのは5月3日の日中。最近ではけっこう暑い日もありますよね。

そんな中、水分もあまりとれずにお米数袋分の着物をぶら下げて歩くわけですから、優雅な見た目と裏腹にかなり過酷な現場。

太夫さんたちはほとんど脱水症状に近い状態で役目を務めているそうです。

私も一度間近で見たことがありますが、数歩の外八文字でもかなり息が上がっている様子が見てとれました。

それを必死に抑えながら妖艶な笑みを保つ太夫さんたちの姿に凄みを感じたことをよく覚えています。

ここからは下世話な話。

かつて呉服屋さんに伺った話ですが、先帝祭の花魁の衣装には恐ろしい程の金額がかかっているのだそうです。

そして現在、五人の太夫は日本舞踊の名取さんから選ばれるそうですが、これにも莫大なカネが動いているというまことしやかな噂が。

そこにどういう力関係が働くのか、先帝祭の上臈道中を歩いたという実績がその後どう生きてくるのか。

一般庶民の私には皆目見当がつきません。伝統芸能の世界は奥深い…

その他 先帝祭のプチ情報

その昔 先帝祭の日は「雨が降らなきゃ金が降る」と言われた程に賑わったそうです。

母が学生の頃は安徳天皇の命日に執り行われていましたが、平日であれば授業が午前中で切り上げられ、祭りに行くよう促されていたとのこと。

現在は5月2日から4日までの3日間「しものせき海峡まつり」と称して様々な行事が実施されています。

2日が平家一門の参拝、3日が上臈道中。

この期間は他にも朝鮮通信使を模したパレード、武蔵と小次郎の巌流島の決戦関連の寸劇、はたまた平家の敵である源氏のイベントまで催され、カオスです。

おわりに

余談ですが、関門海峡あたりでは はさみが極めて小さく、甲羅の模様が恐ろしい人の顔に見えるカニが釣れることがあります。

源氏に敗れ武器を奪われた平氏の怨念が乗り移ったのだと言い伝えられ、平家蟹と呼ばれています。

一応食べられるそうですが、私は試したことはございません……

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おしまい