こんにちは、DEKAEです。
西武新宿線沿線を散歩していたら「林芙美子記念館」なるものを発見。
かつて「放浪記」を読んだ記憶が蘇り、思わず覗いてしまいました。
林芙美子記念館
放浪記
と言いつつ、林芙美子の作品は「放浪記」しか読んでいないのですが。
なぜそれを読もうと思い立ったかといえば、彼女が私の故郷下関に近い門司で生まれたと聞いて、親近感をもったことがきっかけです。
北九州や下関を転々としつつ極貧の幼少時代を送った「私」は、運良く女学校を出て尾道に流れ着きます。
そこで出会った恋人を追って上京するところから物語が転がり始めるわけですが…
次々に男と出会っては捨てられ、仕事を見つけては酒に溺れ…と、大都会でボロ雑巾のように生きる日々を赤裸々に描いた私小説。
ひたすらげんなりするエピソードの連続なのですが、それが実にからりとした筆致であるために新鮮な印象を受けました。
で、これしか読んでいなかったものですから、自分の中で彼女の人生もそこで終わっていたのですよ。そのまま生涯放浪を続け、やぶれかぶれで一生を終えた人だと認識していたわけ。
そしたらまあ、実質の処女作だった「放浪記」によって一躍人気作家になっていたのですね。あまつさえ婿と養子を林家に迎え、落合に居を構えていたとは…
自らを「宿命的な放浪者」と定義していた本人も、まさか自分が家を建てるとは思わなかったと語っていたそうな。
記念館
芙美子は昭和26年に心臓の病により生涯を終えますが、亡くなるまでの10年間、落合の住宅に住み続けました。
その建物は現在、新宿区立「林芙美子記念館」として一般開放しています。
もともと存在を知っていたわけではなく、たまたま周辺を散歩していたら発見。これも何かの縁と、ちょっくら見学してみることにしました。
入口
入館料は一般150円です。
東京都の自粛要請がひと段落しての再開から間もなくだったため、入口は少々ものものしい雰囲気。
チケットを買う前にアルコール消毒を促され、体温を測られたのち万が一のための連絡先も記入しました。
通常開催されるボランティアガイド、敷地内のギャラリー貸し出し等は中断。
まだ訪れる人もまばらでしたので、自由気ままに見学してみましょー。
とりあえず入る前に概要を読んでみると…新居の建築にあたり芙美子自身も設計を学び、理想の家づくりのためにその意向を強く反映させたそうです。
特に、客間よりもお茶の間や台所といった生活領域に工夫をこらしていることから、「暮らす」ことへの思い入れがうかがえます。
内部
仕事場なども再現。
普段は部屋に上がれませんが、たまに特別公開もやっているようです。
人造の石を研ぎだして作ったというご自慢のお台所。スペースがたくさんあってうらやましい…
こちらは今の東芝が昭和5年につくった、日本初の家庭用冷蔵庫。
当時の庶民にはとても手の出るシロモノではなかったようですが、芙美子はこれを購入し、来客があると酒肴を自ら作っては出していたとのこと。
料理好きな彼女は、日々忙しい執筆作業のあいまを縫って家族の食事を支度していたそうです。
庭園
居間や書斎から望む庭園はさまざまな植木で彩られています。外と比べて体感温度が2℃くらい違うので、しばしボーッとしちゃった…
夏にちょっと涼をとりたいときなど良いんじゃないでしょうか。春には花が、秋には紅葉が楽しめそう。
芙美子の愛した孟宗竹はほとんどが刈られていますが、玄関前に少し残っています。
受付をはさみ、邸宅入口の反対側に階段があります。上ってみると家屋を見下ろすようにして庭園が。こちらにも花木が植えられていました。
向かいの撮影スタジオにいたでっぷり体型のネコ
1から8の坂道
ここからは少々趣向を変えまして…
中井駅から記念館に向かう途中に否が応でも気付くのが、特徴的な8つの坂道。
それぞれが一の坂通りから八の坂通りまでの名をもち、駅前の中井通りと坂上通りをつないでいます。これらがほぼ平行に並ぶという、他ではなかなか見かけない坂道です。
大変興味深いので、ちょっと歩いてみましょー。
一の坂通り・二の坂通り(蘭塔坂)
一の坂通りだけは中井通りに直接つながっていません。一度山手通りまで出て、急な階段を登ったところから始まります。
小さいながら見晴らしのいい(?)中井東公園があります。
二の坂通りは唯一「蘭塔坂通り」という別名を与えられています。
中井通りから山手通りに出る坂道の途中からニョキッと生えるような形。
三の坂通り・四の坂通り
駅から記念館に向かう途中、最初に表示に気付くのは三の坂通りではないでしょうか。
けっこう急な坂道ですね~。車だとこの一旦停止ドキドキしそう
四の坂通りが記念館のある坂です。
五の坂通り・六の坂通り
五の坂通りは完全な居住区域。
六の坂通りを登りきると、目白大学の正門にたどり着くようになっています。
洋風で落ち着きのあるキャンパス、いいですね。毎日坂を上って通うのは大変そうですが…
七の坂通り・八の坂通り
七の坂通りは完全な居住区域(ほぼモザイクの写真を掲載する意味とは…)。
八の坂通りのてっぺんには御霊神社が鎮座しています。
なんともいえず重厚な雰囲気だな~と思っていたら、すっごい歴史のある神社のようです。
1月13日に行われる「備射祭」は区の無形民俗文化財に指定されているとか。見に行かねば!
区立落合公園
六の坂通りのふもとから踏切を越えると、新宿区立落合公園があります。
中規模ながらなかなか充実した公園。
池もあるし、小さなドッグランもあります。
そしてこの遊具(ロープに付いた球に乗ってワイヤーをしゃーって滑る)が楽しそうだな~と思って見てました←
アクセス
林芙美子記念館へは、西武新宿線中井駅の北口(賑わってないほう)を出て中井通りを左に進むとすぐです。
落合にはたくさんの文化人が居を構えていたらしいですね。古くから住宅街だったのでしょう、なんともノスタルジー漂う趣。時の流れも少し違うように感じます。
初めて上京したときの家探しで不動産屋に連れてこられたのが、確かこのあたりだったのです。
神田川から近いし雰囲気は気に入ったものの、紹介されたのは半地下の窓無し物件。
ちょっとそんなディストピア生活を送る気にはなれないな~と保留にしたことを思い出します。私にとって特に懐かしく感じる場所でもあります。
おわりに
またひとつ、隠れ癒しスポットを見つけました!
本人がこだわり抜いただけあり、適度な大きさで動線もよくバランスのいいお宅だと感じます。
かつてはこういう純和風住宅に住み、庭に鹿威しなんか置くのが夢でしたね~
まぁ実際住むとなると「虫がヤバそう、冬は寒そう」などと思ってしまうので、やはりたまに見学するくらいがちょうどいいかな…。
少し足を延ばして
おしまい