こんにちは、DEKAEです。
東京ステーションギャラリーで開催していたメスキータ展を観てまいりました(主にポストカード目当て)。
サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ
概要
東京駅でポスターを見てからずっと気になっていたメスキータ展。
メスキータ(1868 - 1944)はオランダに生まれたポルトガル系ユダヤ人で、版画家・画家として活動していました。
美術学校で後進の育成にも注力し、とりわけ著名な弟子には だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャーがいます。
1944年、ドイツ軍に逮捕された一家は強制収容所に送られ、メスキータ夫妻はアウシュビッツ、息子ヤープはテレージエンシュタットで命を落とします。
エッシャーやヤープの友人たちがメスキータ家から作品を救い出し、後に回顧展を開くことができる程度に作品を保護できました。
この行為にも、当時は相当な危険が伴ったようですね。
そんな歴史を含めても、恐らく日本で(世界的にも?)あまり知られていない芸術家ではないでしょうか。
私もこのポスターを見るまで全く知りませんでしたし、だからこそポスターの放つ鮮烈なイメージに興味を引かれたわけですが。
この東京ステーションギャラリーでの展示が日本初の大規模回顧展とのこと。
現在彼の作品の相当数をドイツのご夫婦が個人所有しており、その方たちの協力のもと実現したようです。
ドイツ軍から友人たちが救い出した作品群が、回り回ってドイツ人の手に渡ったということにも数奇な縁を感じますね。
パキっとした木版画には どこか成人向けコミック的なテイストもあります。
感想とか
今回はメスキータの作品200超が一堂に会しており なかなかの見応え。
木版・エッチング・ドローイングなどの他、雑誌の表紙デザインなども展示されていました。特に木版による肖像画や花、動物の作品群は素晴らしい。
木版に対してドローイングには生物画や肖像画はなく、空想を描いたシュールなものばかりです。
展示のラストが その空想画コーナーになっているので、若干妙な気分で会場を後にしました。笑
やはり私が感銘を受けたのは木版!
人や動物の毛の流れだけで輪郭を浮かび上がらせたり、微細な線の太さの差で光陰を表現したり…近くでまじまじと見つめてしまうものばかり。
また彼は作品に幾何学模様を取り入れることが多かったようで、衣服や背景のデザインが近代中東欧っぽくて非常に好みでした。
マンガのようなポップさとどこか不気味な雰囲気、それに幾何学模様のミックスで唯一無二の世界観です。
上記2点は息子ヤープを描いたもの。幼年期から青年期までたびたびモデルにしていたようです。
メスキータが強制収容所に送られたのって75歳のときだったんですよね。
なんか…息子を描いていた時には老境に入ってユダヤ人という理由だけで殺されるなんて想像もしていなかっただろうな、と感じましたし、
(しかも本人はあまり熱心なユダヤ教徒ではなかったらしい)
最後に愛息と引き離された時の胸のうちを思うと…。
絵画とは関係なく重苦しい気分になる展示でもありました。
ミュージアムショップでポストカード選び
やっぱり今回もポストカード爆買い♪←
一番上の少年の木版は、輪郭を縁どらずに対象物を浮かび上がらせる技法が好きです。特に肩のラインの表現が秀逸。
左上は西洋芸術に欠かせない概念である「メメント・モリ」(死を忘れるなかれ)をメスキータ流に解釈したもの。
左下はカラーの花の木版ですが、背景に幾何学模様があしらわれています。
中央は空想画を版画にしたもの。ピカソ的であり水木しげる先生的でもある不思議な構図…でもポスクロで使いづらいw
裏面もカッコいいのですよ!
おわりに
またしても やりおったな東京ステーションギャラリー。
ここの「あまり知られてないけど面白い」芸術家に対する感度の高さには相変わらず脱帽です。
なお、本展はキュレイターズという会社が企画・運営しているとのこと。この会社のこれまでの展示会実績を見ているだけでも面白いです。
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おしまい