ドブリーデン(こんにちは)、DEKAEです。
美の都・プラハは音楽も盛ん。街の中心部には国立歌劇場・エステート劇場・国民劇場という三つのオペラ座があります。
今回はそのうちの国民劇場のチケットの買い方、内部の様子やドレスコードをご紹介。
鑑賞するのはチェコを代表する作曲家、レオシュ・ヤナーチェクの『イェヌーファ』です。
国民劇場 Národní divadlo
概要
さて、冒頭プラハには三つの歌劇場があると申し上げましたが、そのうちの国民劇場の特徴は…
19世紀中期、オーストリア帝国への支配に対し、民族への独立を示すために建設された「チェコ語によるチェコ人のための舞台」
であるということ。
建設当時はヤナーチェクやスメタナなどチェコ人作曲家のオペラを母国語で上演していました。
現在は様々なオペラを原語で上演してますが、チェコ人作曲家を取り上げる機会が多いという点で特色を保っています。
チェコ人の多くを占めるスラヴ族は、歴史的に抑圧への反抗を繰り返してきた誇り高き民族。
ミュシャの『スラヴ叙事詩』など芸術面で民族意識の発揚が多くみられますが、国民劇場にもその心意気が垣間見えます。
しかしまぁ、とにかくおっそろしくチケットが安い!
世界中から人気歌手を呼び寄せ、豪華なプロダクションを展開する国立歌劇場に比べると、国民劇場は庶民派といった趣です。
演じるのは劇場お抱えの歌手ですし、大がかりな舞台装置や絢爛たる衣装もありません。
しかしウィーンに国立歌劇場とフォルクス・オーパーがあるのと同じように、市民にあまねく芸術鑑賞の機会を設けているといえます。
チケット
国民劇場の公式サイトは なかなかレトロで使いづらいので、PRAGUE TICKET OFFICEという代理店のサイトがおすすめ。
プログラム一覧が見やすく そのまま予約・購入まで簡単にできます。
座席は高級な方から順に
・一階ボックスシート
・バルコニーボックスシート
・平土間席
となっており、階が上がるほど安くなっていきます。
私は最上階のボックス席を2,500円程度で購入しましたが、前述の通りウソみたいにチケットが安いので最高値でも7,000円ぐらいでした(演目による)。
内部の様子・服装
開場して中に入ると…庶民的な劇場とはいえきちんと着飾っておいでの方も大勢いらっしゃり、そこはさすがヨーロッパ。
気分が華やぐとともに、自身もジャケット&革靴にしといて良かったと安心しました…
ま、普段着でも特に問題ないと思います。
私が座ったBoxes 2nd Balconyへの入口です♪
各ボックスは扉で区切られており、中にコート掛け・帽子掛けなどもあってテンション上がります。
幕間には係の方が扉を開けてくださいますしね!
1883年に完成した建物ですが非常に美しく荘厳です。
豪華な緞帳。
天井画も圧巻です!お見逃しなく!
私がいたのは最上段(三階)のボックス席。この写真とは反対側のステージ近くでした。
ここに座っているだけで やんごとなき感じに見えますよね←
幕間には休憩スペースでアルコールやコーヒー、軽食を楽しめます。
売店でプログラムも販売していますが、普通の紙に印刷しただけの冊子(しかもチェコ語のみ)だったので今回は遠慮しておきました。笑
アクセス
旧市街をモルダウ川方面に進み、チェコ軍団橋のたもとにあります。
トラムの最寄駅はNárodní divadlo(国民劇場)ですが、旧市街中心部のヴァーツラフ広場あたりからは徒歩20分程度。
▲目の前の道路幅があまり広くないので、通りの向こう側に渡っても建物の全容を撮るのは難しい…。全体写真を撮りたい場合は橋の対岸がいいかもしれません。
▲モルダウ川に面して立つ国民劇場。休憩時にはルーフバルコニーに出ることもでき、そこからカレル橋・プラハ城を望めます。
ヤナーチェク - イェヌーファ Jenůfa
概要
ここからは私が現地で鑑賞したチェコオペラのご紹介。
レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)はチェコ・モラヴィア地方出身の作曲家です。
恐らくクラシック好きでないと聞いたことのない名前でしょう。
そのクラシック好きの間でも知られているのは『シンフォニエッタ』ぐらいではないでしょうか(私がそうでした)。
そんなヤナーチェク、実はけっこう多作でオペラだけでも11曲を書いています。
中でも国内外で演奏頻度が高いのが『イェヌーファ(原題:彼女の養女)』。全三幕、2時間程度の上演時間です。
日本でも何度か上演されており、2016年には新国立劇場初のヤナーチェク作品として取り上げられています。
このオペラの最大の特徴は歌詞が散文体で書かれている点。舞台となるモラヴィア地方の訛りまで入っているそう。
さらにそれを「発話旋律」と呼ばれるメロディに乗せることで、会話の抑揚や感情の動きを音楽で表そうとしています。
そうは言ってもチェコ語を理解できないので全く実感は湧かないのですが(笑)
これにモラヴィアの民謡なども織り交ぜ、独自の音楽世界を作り出します。
感想とか
あらすじを書くと長くなるのでWikipedia等を参照いただきたいのですが…まぁ驚くほど幸の薄い少女の物語です。
オペラにありがちな悪女キャラとか呪われキャラでもなく、ただの純真な少女なのに次々と不幸に見舞われるイェヌーファちゃん。
まず原題が『彼女の養女』となっていますが、イェヌーファはダメ父の後妻の養女となり、一緒に暮らしているわけです。
この時点で少々複雑なのに、その後も妊娠・嫉妬・傷害事件・裏切りに隠し事と、ま~あ渦巻く渦巻く。
まるで昼ドラな展開が延々と続き、終わるころにはげんなりです。
最終的に孤独になったイェヌーファに、一人の青年がそっと近づきます。
この青年、もともと彼女に惚れていたがゆえに不幸の一つを引き起こすことになるのですが、それらをひっくるめて生涯彼女を守ると決意します。
「あなたはこれ以上私の不幸に付き合う必要はないわ」と青年に告げるイェヌーファ。もう何て健気…。
しかし青年は「2人ならどんな困難も乗り越えられる」と語り、イェヌーファもこれを受け入れます。
このラストシーン、ベタな展開ながら演出が良くてですね。
二人が客席に背を向けて、観客と同じ方向をまっすぐ見据えながら並んで立つのです。
そして文字通り一筋の希望の光がステージ上の二人を照らし――ちょっと泣いちゃった←
伝統的なオペラって基本的に喜劇か悲劇の2パターンしかないので、このようなドラマ仕立ての台本は現代的ですよね。
おわりに
歴史ある存在でありながら、どこかアットホームなプラハ国民劇場。
なかなか上演されにくいチェコオペラの実演を鑑賞できる機会も多く、何より格安でヨーロッパ芸術に触れられるという点で大変おすすめです。
オペラ前の腹ごしらえや終演後のチルアウトには目の前のカフェ『Slavia』が便利。
年越しはウィーンオペラ!
おしまい