こんにちは、DEKAEです。
早稲田から神楽坂へ至る道のりは、新宿区の中でも閑静なエリア。ここに、日本文学界に多大な貢献をした夏目漱石先生をしのぶ記念館があります。
先生の大ファンというわけでもないのですが、とある情報を聞きつけて潜入してみました。
新宿区立 漱石山房記念館
夏目漱石と私
実は私…漱石先生の大ファンじゃないどころか、若干苦手意識すらあるんですよね…
最初に読んだ「坊ちゃん」は熱血ドラマ感が苦手で、次に読んだ「吾輩は猫である」はもう文体が苦手すぎて途中で断念。
それ以降、有名な三部作などもまったく読まないまま過ぎてしまいました。
夏目漱石は現在の新宿区喜久井町あたりに生まれています。もとは三河の武家だった由緒正しき家系でした。
「漱石」はペンネームですが、夏目家というのは実在したんですね。早稲田駅付近に「夏目坂」という坂道があり、これは漱石の実父が名付けたそう。
新宿区在住の私としては、このあたりの地域にはなじみもあるので…漱石先生についてもう少し詳しく知りたいという思いはあったのですよ、一応…
実は、漱石の誕生から1年も経たないうちに大政奉還が行われています。そんなこともあって、没落しつつある名家となっていた夏目家。
その末っ子として生まれたことが彼に激動の幼少期を送らせています。
それでも帝大の大学院まで進み、英文学にも精通するようになったわけですから、もともと頭がよかったうえに真面目な性格だったのでしょうね。
記念館の概要
漱石山房記念館は、新宿区立の施設として2017年にオープン。
夏目漱石の日本文学界における功績は説明するまでもありませんが、単独での記念館は案外これが初めてだったようです。
早稲田通りから側道に入った住宅街に忽然と現れるという、なんとも不思議なロケーション。
ここがまさに、漱石先生が晩年を過ごした家があった場所なのです。
非常に面倒見がよかった彼は、すべての来訪者やお弟子さんに親切に接したそう。
常に若き文学者などであふれかえる様子から、その邸宅は「漱石山房」と呼ばれて親しまれるようになりました。
家屋は第二次世界大戦のさなかに失われましたが、記念館として再び人の集まる場所になったのですね。
外観
2017年の開館ということで、大きなガラス窓のモダンな建築です。
正面の道が勾配であることも不思議な印象を与えていますね。
入口に至るまでのスロープに沿って多種多様な植物が。
ちょうどザクロの実がなるシーズンだったようです。ザクロの木なんて初めて見たかも?
栗も実り始めていました。勝手にもいで持って帰ったら、やはり怒られるのかな?←
内部
入館料は一般300円です。中学生までは半額かつ、土日祝は無料。
1階の導入展示は、寄せての写真撮影はNG(全体像のみOK)。2階の展示室には貴重な初版本などもありましたが、撮影はほぼ不可能です。
導入展示のハイライトが書斎の再現。
漱石山房は空襲によって焼け落ちてしまいますが、その蔵書は弟子のひとり小宮豊隆によって東北に移され、戦火を逃れます。
これらは現在でも東北大学に保管されています。この部屋を作るにあたり、同大学の協力を得て全ての文献の表紙・背表紙を再現したそう。
ちょっと驚異的なこだわりようです。
フォトブースも設けられています…
展示内容は生い立ちから家族について、犬や猫との関わり、交友関係などパーソナルな部分が中心。すごく多いわけでもないですが、なかなかの見ごたえでした。
印象に残ったエピソードのひとつが、先生が寄席通いをが趣味としていたこと。正岡子規と親しくなったのも、同じ趣味をもつことがきっかけだったそうです。
当時は神楽坂にも数軒の寄席があったそうですから、漱石山房は寄席通いには最適なロケーションだったことでしょう。
落語を好む作家は、それが作品にもけっこう影響を与えていますよね。彼の書く文章も比較的短く、歯切れがいい。
館内のいたるところに案内役のねこ氏が
もうひとつ、先生は絵を描くことも楽しんだようです。友人知人に絵手紙を送ったり、描いた絵を自宅に飾っては訪問者に見せていたりした…とのこと。
が、あまり上手とはいえなかったようで…そのたびに愛弟子たちからけなされたり、からかわれたりしたそうです。
…………。
カワイソウダヨー(´;ω;`)
私も絵を描くことに関しては数多くの方に生温い笑いをお届けしてきた立場として、このエピソードに関してはもう本っ当にいたたまれない。
しかもご丁寧に本人が描いた絵も展示され、あまつさえグッズ化までされてますからね。
まぁ確かに「これは…?」みたいな絵もありましたけど、「吾輩は~」のモデルになったとされるネコの水墨画なんて、非常に味があって素敵なんです。
少なくとも私なんかより断然お上手ですよ←
もっとも、本人は「描くことそのものが楽しいのです」などとうそぶき、手厳しい批評もどこ吹く風だったそうですが。
それにしても、天下の夏目漱石先生の手によるものを「けなす」「からかう」など、なんと大それたことよ。
まぁ、それだけざっくばらんな雰囲気で後進と交友されていた、先生のお人柄がよく表れるエピソードとして前向きにとらえましょう…。
ミュージアムショップ
漱石山房記念館は小規模ながらミュージアムショップを併設しています。しかもグッズがけっこう可愛い。同じ区立施設の林芙美子記念館との扱いの差…
で、私Postcrossingという趣味がありましてね。
大量のポストカードを使用するため自宅には常にストックがあります。のみならず、出かけると必ず新しいカードを探してしまうんですね。
そうです、ここへ来る前に調べておいたのですよ。この記念館、ばっちりポストカードも作っているではありませんか!しかも1枚60円!やっす
てなわけで、ショップにあったポストカードをまとめ買いしちゃいました☆
直筆原稿をそのままプリントしたもの。インクがボタッと落ちていたり「The」の練習をしていたり、書き損じに味わいが生まれていますね。
原稿用紙の上部には「漱石山房」の字。晩年の漱石先生は、原稿用紙は神楽坂の相馬屋源四郎商店のものしか使わないと決めていたようです。
相馬屋さんは、なんと2020年現在も神楽坂で営業中!文房具店ですが、自社製の原稿用紙を今でも製造されています。
「吾輩は猫である」の初版本(明治40年)表紙!右が上巻、左が下巻だったようです。
猫好きにもおすすめの記念館…
ご本人の肖像は外せないでしょう。
最も有名なこの写真、黒い腕章を巻いているのは、撮影したのが明治天皇の「大喪の礼」の日だったからだそうです。
右は漫画家にして岡本太郎の父でもある岡本一平の手によるもの。実物よりもオヤジ臭いような気がw
猫の表情もコミカルでいいですね。
まさかの記念切手シートまで売られていた(記念館限定)!
82円切手のみのものと、82円・62円の混ざったものの2種類がありました。帰ってから気づいたけど、価格改定前の料金の切手で微妙に使いづらかった…
82円と62円の混合切手シートのみ買って帰りました。こちらはポストカード2枚付きのセットで1,500円です。
アクセス
漱石山房記念館へは、東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩5~6分。
早稲田大学じゃない側の出口(賑わってないほう)を出て、「漱石山房通り」と名付けられた小路を進みます。エレベーターで昇る2番出口が一番便利です。
おわりに
館内には3,500の蔵書数を誇る図書室やブックカフェも併設。
平常時―感染症やら何やらがないとき―には、本を片手にお茶をしばけるみたいです。
漱石関連図書が中心になるものの、一風変わった図書館やカフェとして利用してみるのも面白そうですね。
関連記事
おしまい